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失った自尊心を取り戻すためにした“自分の褒め方”

~「できないこと」が多くて自己否定の日々から抜け出すには…

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2023.3.1

持病があり、人から助けてもらうことが多かった私は、ごく自然に自尊心を失くしていった。
できないことだらけの私はダメな人間なんだと、何度も自分を責めた。

そんな私が辿り着いた、自分の褒め方。誰かの心の支えになったら嬉しい。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

人の助けを借りないと生きられない私はダメ人間

誰かの手を煩わせないと、自由に行動できない。それが幼少期の私にとっては、当たり前の日常だった。

階段は息が切れて登れないから、大人におんぶを頼まないといけない。クラスメイトが団結する体育は、自分ひとりだけ絆を育む機会を奪われたと感じる苦痛な時間だった。

好きな服を着ても、気温を読み間違えて薄着になってしまうと、すぐに体調が崩れる。自転車で友達とどこかへ出かけようとしても、ペダルをこぐのが苦しいことがあって迷惑をかけた。

できることよりも、できないことが圧倒的に多い自分の世界。ただただ、しんどかった。持病を気遣ってくれるのは、ありがたい。家族のサポートも友達の配慮も、感謝すべきもの。そう分かってはいたけれど、誰の力も借りずに生きてみたかった。

階段が普通に登れる、友達の家に自転車をこいで集まれる、好きな服を好きなタイミングで着られる、縄跳びも持久走もバレーも本当は全部してみたかった。でも、私は生きているだけで十分だと思わなければいけない障害児だから、そんな願いごとを口にするのは贅沢だと思った。

できないことがあっても、生きていられるだけよかったと思おう。そう自分に言い聞かせる中で、自尊心がどんどんすり減っていった。自尊心という言葉すら、まだ知らなかった年頃で、私は不自由な体である自分のことが嫌いでたまらなくなっていったのだ。

頑なに人の助けを拒んだ末に辿り着いた自分の受け入れ方

その反動だろうか。誰の力も借りず、何でも自力でなんとかしようとする人生を歩むようになったのは。昔から、人の助けを借りる機会が多かったせいか、「早く自立をする」が20代の頃の目標だった。

運よく、フリーライターという職業にありつけ、自分を養えるようになってからも頑なに人を頼ろうとしない性格を変えることはできなかった。「いつも、事後報告だね」「もう少し、相談してよ」と、友人や家族からよく言われた。

そんな自分を、ようやく変えようと思えるようになったのは30代になってからだ。体に鞭を打ち続けた結果、顔面神経麻痺という病を患ったり、私の思いを否定せずに耳を傾けてくれる恋人に出会えたりしたことが大きかった。

何かができることが人の価値を決めるのではないのだと、初めて気づいた。何もできなくても、人には価値があるのだと思うことができた。それは、できないことだらけの私にとって、大きな発見だった。

だから、思えた。もういい加減、自分を赦してあげてもいいんじゃないか、と。幸せになることに貪欲になってもいいんじゃないかと。

考え方が変わってから、私は「自分褒め日記」をつけ始めた。朝起きれた、仕事が頑張れた、ご飯がおいしく作れた、よく寝れた。そんな何気ない自分の頑張りをちゃんと認めてあげたくて。

「風邪をひいたけれど好きな服を着れた」や「人にちゃんと頼れた」など今まで、自分を責める理由になっていたことも、あえて自分を褒める視点で捉え、日記として綴った。

そうした日々を送る中で気づいたのが、世界は自分の見方ひとつで変わるということ。「できないこと」は裏を返せば、いつも「できたこと」であった。

階段をひとりで登れなかったあの日の私も、できる視点で見返してみれば「体を気遣って大人に頼れた」に変わった。悲しかった体育の時間も「無理をせずに休めた」になった。

私はできないことだらけの人間じゃなく、ちゃんとできることはしてきた人間だった。そう気づいたら心が楽になり、幼少期の自分が少し報われたような気がした。

どうしても人の手を借りないといけない体であると、自己嫌悪や罪悪感が湧いてきてしまう。けれど、必要なサポートを得ることは自分の体調を守るために大切なことだ。だから、まずはちゃんとSOSの声を上げることができた自分を褒めてあげてほしい。

そして、その上で「できない視点」ではなく、「できた視点」で人生や今という瞬間を見返してみてほしい。あなたは、できないことだらけの人間じゃない。そんな言葉を、似た苦しみを抱えている人に贈りたい。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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