障がいがあると、仕事だけでなくプライベートも結構大変。~妊娠・出産編~
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2021.3.5
障がいを持っていると、仕事だけでなく、人間関係、日常生活、金銭面など、さまざまなところでハードルを感じることがあります。障がいや個性により苦労を感じる点は多種多様ですが、今回は私が経験したひとつのハードル「妊娠・出産」についてご紹介します。
障がいを持つ人が、働く上で必要としている「理解」。仕事に限らずプライベートでの大変さを知ってもらうことで、働きやすさのきっかけにつながればと思っています。
執筆:高山 あっこ Akko Takayama
はじめに
つわり、眠気、むくみ、体重管理、息切れ、妊娠高血圧症候群・・・健康な女性でさえ辛いことが多く一筋縄ではいかない妊娠・出産。
進行性の難病、筋ジストロフィーを抱える私にとっては、尚更身体的にも精神的にも負担の大きいチャレンジだったのかもしれません。
「そもそも、妊娠に耐えうるのか?」という呼吸器や心臓の検査から始まり、妊娠中の転倒リスクを減らすためのリハビリ通い、親族を巻き込んでの育児体制づくりなど。普通の人とは違う、数多くの問題を越えなければいけませんでした。
今回は、その中から特に大変だったことをピックアップしてご紹介します。
大変だったこと①「おめでとう」と言ってもらえない
妊娠中、精神的に一番辛かったことは「おめでとう」とあまり言ってもらえないことでした。「え?本気?大丈夫?」というリアクションがほとんど。
幼い頃よりテレビや映画で「妊娠報告→盛大な祝福」のシーンを何度も見て、そうなるものだと刷り込まれていた私は、そのギャップにショックを受けました。
「祝福されていない子を産んでもいいのだろうか」と真剣に悩むこともありました。
大変だったこと②骨を折る
筋力のない私は、小石や道のわずかな凹凸など、本当にささいなことでバランスを崩し派手に転倒してしまいます。そのため、おなかが大きくなり日々体のバランスが変わる妊娠中は、とにかく慎重に歩く必要がありました。
気を付けてはいたのですが、ある日、床に落ちていた水に滑り盛大に転ぶ事件が発生。本能でお腹を守ろうと思ったのか、あごから着地し骨折してしまいました。
あごの骨を固定するために、上下の歯ぐきに釘を打ち込みワイヤーで固定。しゃべることも、歯を磨くことも、固形物を食べることもできない一週間は、とにかく地獄でした。
大変だったこと③入院生活がしんどい
2人目の妊娠中、胎嚢(たいのう)の周辺に血液が溜まる「絨毛膜下血腫(じゅうもまくかけっしゅ)」になり大量出血。即刻、大学病院に入院をすることになりました。
治療法は安静のみ。普通ならば「赤ちゃんのためには、しょうがない」と納得できることかもしれませんが「適度に動かなければ筋力の低下が著しく進む」という実感を持っている私にとっては「安静=病気の進行」になるので、しんどい生活でした。
入院期間が延びるたびに感じる焦りと苛立ち。赤ちゃんのことよりも、わが身の心配ばかりしている自分に嫌気がさしました。
大変だったこと④痛み止めが使えない
先述したように、わずかな変化で転倒してしまう私にとって、帝王切開後の痛み止めも困りごとでした。背中から点滴で入れる痛み止めは、私の背中の感覚をマヒさせました。
それによって、またしても盛大に転倒。点滴よりも弱い錠剤の痛み止めへの変更を余儀なくされました。
錠剤の痛み止めのみで10センチ程度の傷口を抱えての生活は何をするにも痛く、悶絶した記憶があります。
まとめ
思い返せば私の妊娠・出産は、「波乱万丈」の一言に尽きると思います。毎日のように、不安と不調と不満を訴えていた時期でもありました。そんな中、無事に生まれてきてくれた娘たちと、支えてくれた夫、家族、病院の方々には感謝しかありません。
大変だったにも関わらず、2度目の妊娠・出産に挑もうと思ったのは、グングン成長していく子どもという「前向きな存在」が、進行性という、どうしても後ろ向きになりがちな病気を抱える私の光になっているからだと思います。
障がい者の多くは、仕事だけでなくプライベートでもいろいろなハードルを感じながら生きています。
今回は私の経験ですが「ふーん、こんな大変なこともあるんだー」程度でも知ってもらえたらと思います。
Text by
Akko Takayama
高山 あっこ
Co-Co Life 女子部所属。進行性の難病筋ジストロフィーを抱えながら2人の娘を子育て中。コピーライター・フリーライター。地元でママライターとしても活動。現在、どの電動車いすが最適かをお試し中。