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資格があると就職・転職活動に有利?全盲の視覚障害者に待ち受ける資格取得の壁。

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2023.3.26

学歴や職歴に自信がないとき、就職や転職活動を後押ししてくれる存在が資格です。就職したい企業がある、やりたい業務がある、職歴数の多さをカバーしたいなど人それぞれ、様々な想いで資格取得に励んでいることかと思います。でも、視覚障害があるだけで、資格取得の前に受験を受けることにハードルがあり一苦労。今回はそんな私の「日商PC検定データ活用2級」受験体験をお伝えします。

執筆:愛美テミス Temisu Aimi

皆さん、こんにちは!
長年にわたり、ゆるーく転職活動を続けている全盲の冴えない会社員、愛美テミスです。そんな私が今年に入って最初にチャレンジしたことが、Excel技能検定の一つである「日商PC検定データ活用2級」の取得でした。Excelの技能検定を、全盲の視覚障害者がどのように学習し、受験することができたのか。今回はそんな私のお受験記をお届けします。

私が実際に合格するまでの道のりは以下の通り

▶2022年5月:SPANの「日商PC検定2級データ活用受験対策コース(7月期)」の申し込み
▶2022年7月~12月:オンライン(Zoom)で受講(全12回)
▶2023年1月:受験~合格

全盲の就職・転職活動中の皆さん、ぜひお役立てください!

日商PC検定とは

そもそも…である。
世の中に公的/民間合わせてさまざまな資格はありますが、何らかの配慮を必要とする障害者にとって、受験すら困難な試験は少なくありません。まして全盲の視覚障害者にとってはなおさらです。

なぜかといえば、試験の多くは、目で文字を読めることが前提とされているからです。また、IT関連の試験については専用システムを使用することも多く、そうしたシステムにスクリーンリーダーを載せることが難しいこともあり、必然的に全盲は受験できないということになります。

こうした状況もあり、資格取得そのものをあきらめている視覚障害者は少なくありません。そんななか、全盲の視覚障害者がスクリーンリーダー環境下で受験できるPC技能検定が、日商PC検定です。

日商PC検定とは、企業実務においてIT(情報通信技術)を利活用する実践的な知識やスキルの修得を目的とし、ネット社会に対応した新たなビジネススキルの育成を図るための試験です。 試験は「文書作成」、「データ活用」「プレゼン資料作成」の3分野に分かれ、それぞれ知識科目と実技科目の2科目があります(Basic除く)。

スクリーンリーダーによる日商PC検定には、データ活用(Excel)3級/2級と、文書作成(Word)3級/2級があり、現在全国6カ所で受験が可能となっています。さらに特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワークSPANでは、受験対策のための学習コースをオンラインで提供しています。

資格取得をおすすめする理由

長年にわたり、ゆるーく転職活動をしている全盲の私が、実際に合格して気づいたことは、資格取得によって、自己PRがしやすくなるのではないかということです。

私の今までの経験からいうと、全盲の私たちがいくら「パソコンできます」と伝えても、なかなか信じてもらうことができません。そもそも画面が見えない全盲者が、音声を頼りにパソコンを操作できることを知っている採用担当者は、ほとんどいないというのが現状だからです。

一方、組織で働くということで考えると、どんな職種であったとしても、メールのやり取りなどは、やらないいわけにはいきません。こうしたことを踏まえると、客観的な指標をもってスキルを提示できれば、理解の扉が開く可能性も広がるのではないでしょうか。

まとめ

ただでさえ受験可能な試験が少ないのが、私たち全盲の視覚障害者です。今回は、4つの日商PC検定を紹介しましたが、一般に検定試験というのは出題される範囲が明確なので、対策をすれば合格できる数少ない機会です。

また、スクリーンリーダーで合格を目指すのであれば、ショートカットキーやアクセスキーの活用が必須となりますが、世の中にはマウス操作が主体の対策テキストしか存在しないというのも事実です。独学での合格はかなり難易度が高くなってしまうと思われますので、SPANの試験対策講座の受講をおすすめします。ぜひとも有効活用していきましょう。

なお、今回私が受験した「日商PC検定データ活用2級」の具体的な必須スキルは、VLOOKUP関数、ピボットテーブル、売り上げ構成比・構成比累計の算出、前年比の算出、ABC分析、複合グラフの作成、分析結果からのレポート作成となります。

全盲就職・転職活動中の皆さん、ぜひチャレンジしてくださいね!

産業カウンセラー/JPA認定カウンセラー。
1973年生まれ、中途失明の冴えない会社員。
視力がだんだん失われていった10代から30代にかけて感じた恐怖と、社会からの疎外感を忘れることができない。誰もが優しくつながる社会を理想に掲げ、現在ライフワークとしてブラインドのためのITサポートやピアカウンセラーとして活動をしている。さらに、晴眼者のITサポーター養成にも取り組んでいる。

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