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「意識」「働く選択肢」「給与」の3つの天井を取り払う。株式会社ボーダレス・ジャパン UNROOF事業 岡 郁佳さんインタビュー

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2023.4.25

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障がい者雇用に取り組む企業インタビュー。今回は、ソーシャルビジネスに取り組む株式会社ボーダレス・ジャパンが展開するUNROOF事業について岡 郁佳(おかふみか)さんに設立経緯や事業内容、今後の取り組みについて伺いました。

執筆:株式会社ボーダレス・ジャパン(UNROOF)

はじめに

株式会社ボーダレス・ジャパンは、「ソーシャルビジネス」しかやらない会社として2007年に設立され、現在では社会問題に特化した起業家が集い、国内・海外や分野を問わず、40以上の事業を展開しています。

UNROOF事業は、2017年より革職人の雇用・育成と就労を目的に東京都東村山市で革小物工場を運営しています。「意識の天井」「働く(生きる)選択肢の天井」「給与(暮らす)の天井」の3つの天井を取り払い、障がいのある方々の雇用創出を目指しています。

今回は、株式会社ボーダレス・ジャパン UNROOF事業 岡 郁佳(おかふみか)さんに設立経緯や事業内容、今後の取り組みについて伺いました。

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障がい者雇用に取り組む企業インタビュー。障がい者雇用を推進している企業やこれから働こうとしている障がいのある皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

「精神・発達・身体障がい×ものづくり」天井のない社会で働く革職人

UNROOFでは、カスタムオーダーの革製品の受託生産やメーカーの生産パートナーとして展開していますが、現在はどんなメンバーが働いているのでしょうか?


現在は9名のメンバーが働いています。そのうち発達障がい、精神障がい、身体障がいのある方が6名ですが、革製造は未経験の方ばかりで革製造の経験のある技術指導員に工場の立ち上げからサポートいただいています。


障がいのある方々が中心となり、福祉サービスではなくビジネスとして成立を目指されています。どんな経緯があるのでしょうか?


私たちが掲げる3つの天井からの脱却を目指すためでもありますが、純粋に自分たちが障害者枠ではなく、一般就労ができる環境づくりをしたいと思っています。ただ、道のりは容易ではなく、生産パートナーとしての責務がある中でどこまでの範囲で配慮すべきかという点は試行錯誤の連続です。「できる・できない」の線引きを明確に打ち出して期待値のズレは常にコミュニケーションで解消するように心がけています。


革職人としての技術の差だけでなく、特性による業務範囲の差もあると感じます。他者比較の中で自己評価を誤解したり、他責の念が生まれやすい環境があると想像しますが、いかがでしょうか?

当初は、ひとりで全ての工程が担える人材育成を目指していましたが特性がある中で「できないこと」に時間を費やしても生産スピードは上がらず互いにフラストレーションを貯めるだけと改めて認識をしてからは、それぞれの性格と特性を鑑みて、専業や分業を組み合わせながら取り組んでいます。結果的に得意分野に専念できるため、互いの業務を巻き取ったりと前向きな声掛け、助け合い広がり生産スピードも向上しています。

革小物ブランド「UNROOF JAPAN」が誕生!

UNROOFでは、「UNROOF JAPAN」として財布や名刺などの自社ブランドの展開も進めています。OEM生産だけでなく、自社ブランドの立ち上げに至った経緯を教えてください。


UNROOFの製造工程を見たときに、職人の数と生産量が比例するため受託生産のみで売上の拡大を目指すには限界があるように思いました。また、生産納期に追われながら業務を熟すことも精神的不可がかかり、好ましい状態ではありません。それぞれに特性がある中で、自分たちのペースで着実に経営していくためにも、革職人としての技術、価値をしっかりと伝え、良質な商品を販売していく自社ブランドの立ち上げは欠かせませんでした。


現在、MakuakeSTOREで財布と名刺の販売をしています。UNROOFならではのこだわり、特徴を教えてください。

上質なイタリアンレザーや国産姫路レザーを商品に用いたり、材料にこだわっているのはもちろんですが、すべて職人によるハンドメイドであり、左利き、右利きなども選べるユニバーサルデザインなところが私たちならではの特徴です。カラー、利き手、など商品に応じて用意しているオプションでご購入いただき、オーダーをいただいてから生産に入る受注生産の体制を組んでいるため、よりその人にあった商品をお届けできるようにしています。また本革ポーチでも障がい者手帳が入るサイズだったり、今後もひと工夫のある商品を展開していきたいと考えています。

自社ブランドを持つことで技術の向上もさらに求められてくると思いますが、現状の課題などはありますでしょうか?


課題としては、作るアイテムによって難易度が高くなったり、またある程度の経験がない人でないと作れない商品がでてきてしまうという点です。二つ折り財布や長財布では約30ほどの工程がありので、一人がすべてその工程を行うとなると、一定の経験と技術が必要になってきます。


うちでは未経験で入社してくるメンバーがほとんどなので、工程が多いものに関しては一部分業制を取り入れています。そのような商品があることで、メンバーの技術向上や技術をあげたい、というモチベーションにも繋がるので、ある程度は「目標」となるような商品は必要かな、と思っています。

UNROOFの今後の展望

事業強化に向けて新規採用も行っていますか?


UNROOFでは現在、革職人へ挑戦したい方を募集しています。メンバーには工業用ミシンや車の革シートを作っていた方もいれば、服飾系で働いていた方、もちろん障がい者手帳を持っていないメンバーもいます。未経験でも積極的に応募いただきたいと思います。


UNROOFのこれからについて教えてください。


長財布、名刺入れ、三つ折り財布以外にも、ステーショナリー、ガジェット、小物ポーチ、PCケースなども販売を計画しています。また工房でどうしてもでてしまう端材を活用したゼロウェイストな商品も取り組んでいこうと思っています。これまでは生産パートナーとして受注に応じて生産するという流れでしたが、今後は計画的に生産して販売展開することも求められてきます。変化していく経営方針に対して、メンバーのマインドセットを整えていくことも重要なため、より一層のコミュニケーションが欠かせません。


現状は主に障がいのある方の採用を中心に行っていますが、目指すは職場の中に障がい者手帳を持っている人、持っていない人が半分ずつの割合だったとしても成り立つ職場づくりです。そんな職場が増えていくことでよりボーダレスな社会を目指していけるのではないかと思っています。UNROOFではまさに、それを体現する場所として色々なことに挑戦していきたいと思っています。

取材後記

障がいのあるメンバーと試行錯誤を重ねながら着実に前進しようとする想いが伝わるインタビューとなりました。「意識」「働く(生きる)選択肢」「給与(暮らす)」の3つの天井を取り払うために日本にある文化・慣習や制度に立ち向かう挑戦は期待や応援が集まる一方で慣例もなく厳しく長い道のりでもあります。

障がいのある方が作る革小物から誰もが手に取りたがるブランドへ。UNROOFの今後の展開から目が離せません。

株式会社ボーダレス・ジャパン UNROOF事業では障害者が手掛ける革ブランドを展開しています。精神・発達・身体の障害のある革職人が自社の革工房でお財布、名刺入れ、ミニポーチなどの革小物の生産をおこなっています。UNROOFでは障害をはじめとする多様性を受け入れられる社会の実現に取り組んでいます。

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