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性同一性障害の僕が出会ったダイバーシティ理解のある企業への違和感

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2021.5.12

就職活動の際、性同一性障害やトランスジェンダーであることで困ることがいくつもあります。その中でも、面接での質問やコミュニケーションにおいて、企業のスタンスが垣間見えることがあります。ダイバーシティ、SDGsなどを標榜する企業も増えてきましたが、掲げているだけ…にならないように。僕の面接での経験をお伝えします。

執筆:佐藤 悠祐 yusuke sato

「性同一性障害って、胸とかどうなってるの?いや、今後に必要な情報だから…」

初めての転職活動で受けた特別養護老人ホームの面接で、身体のことを根掘り葉掘り聞かれている最中「ここは受かっても、お断りしよう。」と心に決めた。

後日、採用の連絡をいただいたけれど断った。

僕は現在、性別も社会的な認識も「男性」なのだけれど、治療を始めて間もない時期は声も低くなりきらず、胸の手術も行っていなかったので「女性」として認識されることの方が圧倒的に多かった。

それでいてメンズスーツで面接に行くのだから、その場でカミングアウトをせざるを得なくなるということは、自分でもわかっていた。

だが、初めて就職した施設では性別のことに関しては柔軟に対応してくれた。

治療も進んでいなかったのに、男性ロッカーの使用を認めてくれたり、周りの職員も男性と同じ扱いをしてくれていた。友達や親にカミングアウトをしても、理解を示してくれることの方が多かった。

だから油断していたのだ。社会の認識や理解は進んでいるものだと勘違いしてしまった。



転職したいと思った施設は、施設の綺麗さやアクセスの良さにも惹かれたが、男女の制服分けもなく、見学時には「アットホームで、働きやすさを重視している」と紹介された。

「ここでならカミングアウトしても問題ないだろう。」と思い面接を受けた。

しかし、実際には先ほどの画像にあるような質問を約20分にわたってされた。30分のうちの20分。

面接時間の大半は「身体はどうなってるの?」「どういう手術をするの?」「好きになるのは女の子なの?」などの質問だった。

「働く上でそんな情報が必要か?」と思うことまで聞かれた挙句「まだ女の子に見えるから、もうちょっと努力が必要だな。」とまで言われて、笑われた。

これが「アットホーム」なのだとしたら、気持ち悪すぎるなと思った。

現在は多くの企業が【ダイバーシティ】や【SDGsへの取り組み】を掲げているが、社員一人一人の認知度や理解度はさまざまだ。

事実、僕が受けた施設も「今はダイバーシティの時代だから、君みたいな子もこれから来るだろうね」と理解しているかのような言い方をしていたが、実態は先に書いた通り。理解なんて程遠いものだった。


僕以外のトランスジェンダー当事者の「就職活動をした時に困ったこと」の声を集めてみた。

・履歴書の性別欄はどうすればいいのか。
・スーツはどちらを着用するのか。
・髪型やメイクについて。
・どのタイミングでカミングアウトをするのか。

また、採用されたときに提出した履歴書は誰が見られるようになっているのか。

戸籍の性別が変更になったとして、自分の出生時の性別を知られてしまったら、強制的にトランスジェンダーだとバレてしまう。僕はそれも怖いし、嫌だと感じる。

僕も昨年起業して人を雇っているからわかるのだけど、面接の時点で必要な情報というのはそんなに多くない。

トランスジェンダー当事者の身体がどうなってるか、誰を好きになるのかは必要な情報ではなかったように思う。

もし、この記事を読まれている、採用に関わる方がいましたら【採用に本当に必要な情報(根拠を持って必要だと言える情報)】は何か、もう一度考えていただければ嬉しい。

1991年生まれ。東京都八王子市にある【訪問介護事業所SAISON】の管理者。性同一性障害当事者。幼い頃から自分は男だと思いながらも誰にもいえずに過ごす。高校生で初めてカミングアウトをして以降「暮らす」「働く」について考え、現在は介護福祉士として障害を持つ人の暮らしをサポートしている。

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