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聞こえない当事者が、周囲の人と円滑な関係を築き、職場で働きやすくなるためには?

2021.6.30

聴覚に障害があると、働く上で、何が大変だと思いますか?そう、「コミュニケーション」です。今回は聞こえない人のコミュニケーションについて、そして周囲と円滑な関係を築き、働きやすくなるためのポイントについてお話ししていきます。

執筆:牧野 友香子 Yukako Makino

聞こえない人はどんなコミュニケーションをとる?

「聞こえない人」とひとくちに言っても、コミュニケーション方法や聞こえ方は人それぞれです。

例えば、私は読唇と発話で会話をしますが、コロナ禍でマスクの生活になってからは筆談をお願いすることも増えています。場面場面で活用するコミュニケーション方法は異なるのです。



働く上で、聞こえない人がつまずきやすいポイント

働くにあたって、聞こえない人がつまずきやすいポイントとして、2つの場面が挙げられます。

就職したり、配属されたりという最初のタイミングで、聞こえのことをうまく説明ができず、「私は耳が聞こえません」や「自分は話すこともできるし普通の人と変わらないです」と伝えてしまった場合、具体的にどう聞こえないか?どんなふうに接してもらいたいか?ということが共有されず、なにも対応をしてもらえないケースがあります。

また、上司の声が聞こえづらくて何と言ったかわからない、相手の発言内容を理解できなかったという際に、なんとなく「わかりました!」と言ってしまい、結果的に求められている仕事ができなかった、というトラブルもあります。

聞こえない当事者に大切な力

こういったつまずきは、本人が客観的に聞こえのことを理解できていない、言語化できていないことで起きやすいです。

したがって、聞こえない当事者にとって大切なのは「話せるかどうか」ではなく「自分の障害を客観的に理解して、相手にしっかり伝えることができるかどうか」です。

また、聞こえないことでできないこと、聞こえなくても工夫をすればできることなど、当事者にしかわからないことのほうが多く、具体的に説明しなければ、周りもどう対応すればよいのかわからなくなってしまいます。

・電話はできないけれどチャットなら問題ないのか
・社内のメンバーであれば電話がOKなのか
・ミーティングで必要な配慮は一人ずつ話せばいいのか、議事録を共有すればいいのか、それとも通訳レベルでしっかりフォローしないとわからないのか

どれも本人にしかわからないことです。具体的に話すことで、周囲もどのような配慮が必要か、どのような仕事をお願いできるのかがわかりやすくなります。



職場側で受け入れる雰囲気をつくるのも大切

職場側も「聞こえない人」を受け入れる姿勢が必要です。

デフサポで企業研修などを実施している際、本音ではどう思うか?を聞かせていただくことがありますが、どうしても「聞こえない人」が入ってくると「めんどくさい」と思う方が多いのです。

わかりやすく、はっきりとゆっくりと話さないといけない、筆談しないといけないという配慮が必要なため、自分の時間が割かれてしまうのが面倒で、その割にはうまく指示が伝わらないといった経験があると、聞こえない人と働くことを敬遠する人は少なからずいます。

「フォローが必要になる、仕事が増える・・」と職場側が決めつけてしまうと、その雰囲気を察し、当事者が遠慮して言いづらい職場環境になってしまうことがあります。

お互いに歩み寄らない状態のまま働いてしまうと、「これならコミュニケーションが最小限になるからお願いしやすい」仕事や「説明が少なくて済む」仕事をお願いすることが多くなってしまいます。

仕事を任せたものの、特定の人にフォローの比重がかかってしまうこともあり、どちら側もフラストレーションが溜まった結果、長期的な目線で見ると、会社にとってマイナスな結果に陥ることもあります。

そこで、職場側には、固定概念で見るのではなく、「目の前にいる相手」を見てもらいたいなと考えています。

「聴覚障害者」ではなく「一緒に働く〇〇さん」として、何が苦手なのか、得意なのか、知りたいなという気持ちがあると、聞こえない当事者も自分のことを伝えやすくなります。

まとめ

結論からいえば、職場の雰囲気も大切ですし、当事者が自分で自分のことを伝えるスキルも大切です。お互いにプラスになるような働き方のためには「相手目線に立ったコミュニケーション」が求められるのです。

1988年生まれ。生まれつき耳が聞こえないが幼少期にいい先生に出会えたことでことばを習得し、読唇術にて会話をする。ソニーに一般採用にて入社し、人事として7年勤務。難病児が生まれたことを機に株式会社デフサポを立ち上げ、難聴児のことばの教育を実施、企業に対しては障害者雇用のサポートを実施している。

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