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障害者が受けられる福祉サービスって?ー第2回ー

「介護給付」って何?

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2021.8.7

障害者総合支援法によって、さまざまなサービスが障害者に提供されています。
前回は、障害者総合支援法による福祉サービスの全体像をご紹介しました。
第2回では、そのなかでも、よく利用されている「介護給付」の内容について説明します。具体的にどんな支援が受けられるのでしょうか。

第1回 障害者総合支援法による福祉サービスの全体像はこちら

執筆:斎藤 厚子 Atsuko Saito 

介護給付は「障害福祉サービス」の二本柱のひとつ

障害者総合支援法による「自立支援給付(本人に直接行われる支援)」 には2つの重要なサービスが含まれています。

・介護給付(日常生活での介護の支援を受ける)
・訓練等給付(社会の一員として生活できるように訓練の支援を受ける)

つまり、

障害福祉サービス=介護給付+訓練等給付


※「障害福祉サービス」は障害者が自立するために重要なサービスで、全国どこでも同じサービスを受けることができます。

障害者総合支援法によって行われるサービス全体図 「障害福祉サービスの 利用について」(社会福祉協議会)を参考に編集部作成


介護給付ってどんなもの?

障害福祉サービスの中でも身近な「介護給付」とはどんなものでしょうか。毎日の生活のなかで行われる介護支援で、9種類のサービスがあります。


1、居宅介護(ホームヘルプ)

『お風呂やトイレの介助をしてほしい』
『食事の準備、買い物、掃除、洗濯をしてほしい』

そのような場合に利用できる日常的な介護を提供するサービスです。

食事や入浴を助ける身体介護、調理や洗濯などの家事援助、病院などの外出を助ける通院等介助、病院などに行くためのタクシーの乗車や降車を助ける通院等乗降介助

※障害者支援区分1以上の障害者が対象です。


2、重度訪問介護

『(重度の障害で常に介護を必要な人の)入浴や食事の介助をしてほしい』
『見守りをしてほしい』

このようなときに利用できる、重度障害者(一人で行動することがほとんどできない)を対象とするサービス。

身体障害者だけではなく、知的障害や精神障害の場合も利用できます。

入浴や食事を助ける身体介護、洗濯や料理や掃除などの家事援助、移動に伴う介護、自傷行為や他害行為をしないための見守りなど。

居宅介護よりも、より長時間の利用を想定していて24時間利用できるように制度が組まれています。

※障害者支援区分4 以上が対象です。


3、同行援護

『点字ブロックにいつも自転車が止まっているので、視覚障害者の移動を助けてほしい』
『点字がない場所で、代筆や代読をしてほしい 』

このような時に使える視覚障害によって移動が困難な人を支援するサービス。

目的地での代筆や代読も含まれ、視覚障害者の目の代わりとなって支援します。トイレや食事、身支度も手伝います。

「原則として1日で用務を終えるもの」という規定があり、日常的な買い物や余暇活動で使えます(仕事や学校などは範囲外)。

※視覚障害の身体障害者手帳を所持していることが必要です。


4、行動援護

『(知的障害や精神障害で常に介護が必要な人に)外出先での予定を障害者自身に前もって理解させて欲しい』
『(自閉症の人がパニックを起こすなど)発作や問題行動が起きた時に助けてほしい』

そのような状況で利用できるサービスです。

知的障害者や精神障害者のうち、行動に著しく困難がある人が対象です。

あらかじめ目的地の行動などを理解させる予防的対応と、問題行動をうまくおさめる制御的対応を支援します。また、移動時の介助や食事、排泄の手助けもします。

※知的障害者・精神障害者のうち障害支援区分3以上が対象となります。


5、重度障害者等包括支援

『(重度障害者で)契約していないサービスが必要なとき、いちいち申し込まなくても済むようにして欲しい』

このような場合に便利なのが、さまざまな支援策をひとつずつ申し込むのではなく、一度に申し込みできるサービスです。

障害者の状況に応じて居宅介護や重度訪問介護など組み合わせて利用できます。

※障害支援区分が6で意思疎通が難しい人などが対象です。


6、短期入所(ショートステイ)

『介護者(家族)の体調不良のとき、障害者を短期間預かって欲しい』

そのような場合に利用できる、自宅介護の障害者が施設で短期間介護してもらうサービス。

施設内で食事や入浴、排泄の介護や日常生活の支援をしてくれます。 介護している家族が体調を崩したり、介護疲れでお休みが欲しいときに使います。

障害者が無理なく地域で生活を続けていくために、介護者のケアも考えました。

※障害支援区分1以上の障害者が利用できます。


7、療養介護

『介護と医療的ケアと両方が必要なので病院で面倒を見て欲しい』

このような要望に応えたのが、筋萎縮性側索硬化症(ALS )や筋ジストロフィーなど で、介護と医療的ケアが両方必要な人に医療機関が行う支援です。

医療や介護、リハビリ、看護、学校教育などがチームを組んでその人に応じたプログラムを実施します。
 
外に出て自立生活をするか、それとも入院し続けるかを障害者自身で決めることができます。

※ALS で障害支援区分6以上、もしくは筋ジストロフィーで障害支援区分5以上の人が利用できます。


8、生活介護

『介護されるだけではなく、絵を書いたりパンを作ったり日常生活を楽しみたい』

このような場合に利用できるのが生活介護です。

排泄や食事などの介護だけではなく、内職( パン焼き、箱の組み立てなど)や、創作活動( 絵画、書道など ) を通所施設であわせて行うことにより、障害者が日常生活を生き生きと暮らせるようにします。

施設には「生活支援員」がいて、状況に応じたサービスを考えてくれます。

※常に介護が必要な人に対する支援なので、障害支援区分が3以上の人が対象。


9、施設入所支援

『障害者支援施設で、 夜のケアも受けたい』

このような要望に応えたのが、通所施設で 夜間ケアも受けられるサービスです。

「日中の活動拠点の施設」と「夜の施設」を分けることによって、障害者がより自由にサービスを組み合わせることができます。

たとえば日中は A という施設でお気に入りの訓練を受ける、夜は B という施設で夜間ケアを、という選択ができるようになります。


利用者ひとりひとりの実情に合った支援を

介護給付は、生活の基本となる支援です。そのため身体障害、知的障害、精神障害、難病者などの障害の種類を問わず、どこの地域でも同じサービスが受けられます。

利用者の求める支援は一人一人違います。また、去年は必要なかった支援も、今年は必要になるなど、時間の経過でも変化します。そこで定期的にサービスの見直しをして、それぞれのニーズに合った支援が実施されるようになりました。

上記で説明した介護給付のサービスを「訪問系」「日中活動系」「施設系」のように、分類し直すことができます。
どのようなシーンで使いたいのか考え、系列の違う支援も組み合わせてオーダーメイドのサービスを作る助けとします。

たとえば「生活介護で施設に通い」ながら「居宅介護で日常の生活支援を受ける」ことができます。

系列別にした介護給付の一覧(厚生労働省による) ※障害支援区分の程度により、受けられない場合もあります。


まとめ

いかがでしたか。介護給付は障害者が生活していくうえで欠かせないサービスで、日本全国で同じサービスを受けられます。障害を持っていても、住んでいる地域の中で生活ができるように支援をしてくれます。
いろいろな種類をうまく組み合わせて、自分にぴったり合ったサービスを受けるようにしましょう。

次回以降は、
第3回:訓練等給付ってなに?
第4回:相談支援、自立支援医療、補助具って?
第5回:地域生活事業って?
第6回:障害福祉サービスの手続き方法は?いくらかかるの?
の内容でお伝えする予定です。

子育てが1段落したとたん介護が始まった。寝たきり母の自宅介護をしつつ通信制大学に挑戦。介護と学問と家事の同時進行に真剣に悩む。卒論に苦労したが5年で卒業。目標達成の素晴らしさを知る。
身近に難聴者がおり、障害の勉強を始める。
以前の職場同僚に身障者の方がいたが、今ならもっとうまく友達になれたかも。
あきれるほどの弱虫だが、日々挑戦を続ける。
「文を書くことは筋トレと同じ」と考え、noteを毎日発信中。

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