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大人の発達障害の私が感じる、働く前に向き合っておきたい「自分が何を望んでいるのか」ということ。

2021.7.29

27歳のときに「ADHD(注意欠如多動性障害)」と診断され、いわゆる「大人の発達障害」だとわかった私は、障害者の就労支援の現場に支援者として働きながら感じたこと。どうして「一般就職をしたい」と口をそろえてみんな言うのか。それって目的ではなく、手段なのでは?

執筆:森本 しおり Morimoto Shiori

はじめに

私は今から5年ほど前の27歳のときに「ADHD(注意欠如多動性障害)」と診断されました。いわゆる「大人の発達障害」です。

学生時代からいろいろと困っていることはありましたが、社会人になって一気に深刻化し、問題も増えました。パニック障害を発症し、精神科にかかって初めて自分の障害のことが判明しました。

ここまでいくつかの仕事を経験した後、現在は放課後等デイサービスという障害児向けの学童のような場所で非常勤として働きつつ、ライターや編集の仕事をしています。

自分の障害特性、そして働くことへの価値観を考えながらたどり着いた今の働き方(ゆるめのパラレルワーク)が、自分にはちょうどよいと感じています。それまでは何事にも一生懸命に、一心不乱に働いていました。

自分に合った働き方を考えようと思い至ったのは、以前、障害者の就労継続支援事業所の支援員をしていたときのことです。

就労支援の現場でモヤモヤしていたこと。

以前の職場で障害者の就労支援に携わっていたとき、ずっとモヤモヤしていたことがありました。

それはどうしてみんな口をそろえて「一般就職をしたい」「一人暮らしをしたい」と言うのだろうということです。

就労支援の場なので、当たり前な話ではあるのですが、「障害者」とひとくくりにしても、障害の種類や程度もちがえば、これまでの生育歴、今置かれている環境、困りごと、本人の持っている価値観もさまざまです。

一人ひとりに明確なちがいがあるのに、長期的な目標が同じというのは、不自然ではないかと感じてしまっていたのです。

本当は自立したい(経済的、精神的、物理的など自立のカタチはいくつかあると思いますが)という想いなのに、「一般就職をしたい」「一人暮らしをしたい」と言っているだけのではないか、と考えてみたこともありました。

最近のトレンドワードである「生きづらさ」の観点からいえば、「一般就職すれば、生きづらくなくなりますか?」と質問したとき、通所している皆さんが「はい!」と迷いなく答えられればいいのですが、あの時の現場感でいうと「いやいや、一般就職さえできれば、何でもいいってわけじゃない」という答えが返ってくるのではないかと思ってしまいます。

「一般就職をしたい」「一人暮らしをしたい」という想いが、果たして本当に本人にとって最適なものなのかどうか。

私自身、今の働き方はちょうどよいと感じていますが、複業というスタイルは一般就職とはひとくくりにしづらいものなので、 「一般就職したい」とばかり思っていたら、めぐり合っていないように感じます。

就労支援に限らず、就職活動や転職活動の時間は「自分が何を望んでいるのか」を考えることが大切で、一般就職や一人暮らしは自分の望みを達成する手段(のひとつ)でしかありません。

「自分が何を望んでいるのかが分からない…」という方もいるかもしれませんが、周りに合わせたり、自分を押し殺したりすることに慣れすぎると、本心が分からなくなってしまうので、まずは考えてみようと勇気を持つことが第一歩だと信じています。



自分の望みを持つことは欲張りなことではない

「自分の望みを持つこと」と「欲張りなこと」はイコールではありません。

今がつらい、抜け出したいと思っているときこそ、心のブレーキを取っ払って、自由に本音をぶちまけてみると、普段は、蓋をして見えなくなってしまっているだけで、自分の望む先(向かう先)が見えてくるのかもしれません。

自分の望む先(向かう先)が明らかでなければ、目的地も判断基準も存在しない状態で、たくさんある道の中から「どの道を行くか選べ」「とりあえず早く決めろ」と言われているようなものです。

就労支援の現場であったり、就職・転職活動中の環境であったりが、この状態に陥っているとリスクでしかありません。

何も決まっていないのに、就職先なんて選べませんし、自分が何に向いているかもわかりません。そんな状態では、迷子になって当たり前で、むしろそれこそが「生きづらさ」なのかもしれません。

「自分の望みを持つこと」で初めて自分の今を抜け出すゴールが見えてきます。

自分を謙遜…ではなく卑下しながら、「何もありません」「望みなんてないです」と言いつつ、「あれは違う」「これじゃない」とブーブー文句を垂れると周囲は振り回され、だんだんと距離が離れていきます。経験者は語る、です。これは「欲張り」です。

ぜひ勇気をもって「自分が何を望んでいるのか」を考えてみてください。

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。

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