筋ジストロフィーの私がライターとして「無理をしない働き方」を見つけるまで~前編~
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2021.8.18
進行性の病気の重圧に負けないように、出産、育児、マイホームなど前向に挑戦し続けた私。「次は何に挑戦しよう」と悩んでいた時にポストに届いた1枚のチラシをきっかけに、「ママライター育成講座」へ応募することにしました。私が「無理をしない働き方」を見つけるまでを、2回に分けてお話していきます。
執筆:高山 あっこ Akko Takayama
勇気を出して参加した講座説明会
ママライター育成講座に応募するには、まず説明会に参加しなければなりませんでした。病気が進行し、基本的に夫としか出歩かなくなっていた私にとって、1人で説明会に参加するだけでもなかなかハードルが高かったです。
「会場はバリアフリーみたいだけど、イスの高さやテーブルによっては立ち上がるのが難しいし、やっぱり行くのはやめようかな」と何度も悩みましたが、「君には、ずっと何かを書いていてほしい」という昔の上司の言葉に背中を押され、説明会に行くことができました。
説明会を担当していたのは2人の子育て中の女性。「ここ、プレハブだから暑いでしょ。」「トイレ壊れ気味だから臭くてごめん!」など、緊張をほぐすように話しかけてくれました。
バリバリでキレキレの人が出てきたらどうしようと思っていた私は、その和やかな雰囲気に一安心しました。
一通りの事務的な説明を終えると、「男の子?女の子?何歳?」「幼稚園?保育園?」など、子育てに関する雑談タイムに。
当時、気軽に話せるママ友が1人もいなかった私にとって、家族以外の人と子どもの話をできるのはとても贅沢な経験でした。
「こんな雰囲気なら、講座に通えそう」と思った私は、帰り際にきちんと自分の病気を申告しておくことにしました。深刻な内容にも関わらず、担当の2人は快く受講を許可してくれました。
楽しかったし、病気のこともきちんと言えたと、達成感を感じながら帰ったのを覚えています。
心から応援してくれる夫の存在
受講テストにも合格し、無事講座に通えることになったのですが1つ問題が残っていました。受講に必要なアイテム、ノートパソコンが家にないことです。
マイホームを買ったばかりで、あまり自由に使えるお金がない中での大出費。迷惑をかけることを申し訳なく思いながら夫に相談すると、「ライター講座いいね、がんばれ!仕事に関わる道具はケチらずいこう」と1番軽くてかっこいいパソコンを買ってくれました。
パソコン、カメラ、ノートなどを準備をしているうちに、開講日を迎えました。「新しい場所に行くイヤイヤ」はクリアしているものの、次は「誰も話しかけてくれなかったらどうしよう」と、「新しい人に会うイヤイヤ」が発動。
今回は、「かっこいいパソコンを買ってもらったから逃げ出したら夫に失望される」というプレッシャーのおかげで、向かうことができました。
胃を痛めながら迎えた開講日
半年かけて行われる講座の受講生は、同じ市に住む計10名の女性、ママライターということで全員が幼い子どものママでした。
「ママ」「ご近所」という共通点はあるものの、私だけが「障がい者」。仲間になれるだろうかと不安に思いながらのスタートでした。
毎度のことながら胃を痛めつつ会場に到着すると、顔見知りの担当女性に「どの席が座りやすい?」と気遣ってもらえてホッと一安心。そして、隣に座った女性が何を話しても爆笑してくれる笑い上戸だったので、リラックスもできました。
おかげで、自己紹介の際には「足が悪いんで、座って失礼します」とさらりと自分の状況を申告するミッションも達成。「新しい人に会うイヤイヤ」は、無事クリアできました。
そして講座の内容としては、新聞記者の方や地域ブランディングの分野で活躍している方のお話を聞け、とてもワクワクするものでした。
「人と話せるだろうか」「会場で無事に座れるかな」など、いろいろと心配はありましたが、結果としては「これから、ライターの勉強をがんばるぞ!」という前向きな思いをお土産に帰ることができました。
終わりに
何をするにも障がいのことが引っ掛かり「新しい場所に行くのがイヤ」「新しい人に会うのがイヤ」と思っていた私ですが、昔の上司の言葉や応援してくれる夫のおかげでママライター育成講座の開講式を迎えられました。
そこで出会った新しい仲間たちと、無理をしない働き方への悩み。それについては次回お話していこうと思います。