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出産したらADHDでした。

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2021.9.23

子育てをしながら正社員として働くうちに、物忘れがどんどんひどくなり、多くの問題が起きてしまいました。今回は、自己紹介もかねて、成人してから発達障害と診断されるまでのお話をしたいと思います。

執筆:とくら じゅん

はじめまして、とくらじゅんと申します。現在二人の子どもと夫の4人で暮らす平凡なADHDです。今回は、私の自己紹介もかねて、成人してから発達障害と診断されるまでのお話をしたいと思います。

私は10代の後半から20代前半にかけて、常に何かに依存している状態でした。最もひどかったのはおそらくギャンブルだったと思います。大学を卒業してから結婚するまでの数年間の間に、気付けば多額の借金を背負っていました。

当時は朝起きるということがほとんどできない状態だったため、アルバイト先のシフトはいつも夕方からでした。そんな時、ちょうど交代になる時間帯のシフトに入っていた夫に出会ったのです。ろくでもない生活を送っていた私でしたが、夫が学生から社会人になったタイミングで結婚し、第一子を出産しました。

妊娠中からおかしなことはいくつかありました。夫との生活の中で、あまりに物忘れを指摘されることが多かったのです。自分一人で過ごしている時には「そんなものだろう」というようなことも指摘されました。例えば、提出すべき書類や買い物のリストに入っていたもの、公共料金の支払いなどなど。

今考えれば指摘されるのも当たり前のことですが、独身時代には携帯料金の払い忘れで電話が止まることなど日常茶飯事だったため、もはや気にも留めていなかったのです。



子どもが生まれてしばらくして、私は人生で初めて正社員で就職をしました。同時に、子どもは保育園に入園することになりました。ここでも多くの問題がありました。

まず、子どもを保育園に預け、会社に着くと自分自身は携帯電話しかもっていない、ということが何度も起こるのです。どうやら私の物忘れは出産と同時に酷くなっているようでした。

会社員生活の中でもおかしなことは続きます。あるとき上司から、別の上司への言伝を頼まれました。私は言付かったことをそのまま伝えたつもりでいたのですが、その内容は全く間違っていたようで、その後ひどく叱責を受けることに。聞いたことをそのまま伝えることすらできないのだから当然です。

また、当時は細かなチェックが必要な業務をしていたのですが、私の確認した書類には毎回ミスが膨大にあるという状態。あまりにも仕事ができないことに落ち込む毎日でした。

私自身の能力は一向に変わっていないのに、子どもが生まれてから管理すべき事柄は増える一方で、どんどんミスは増えていきます。

子どもの予防接種の時期を忘れ、公費で受けられるものを何度も自費で接種しました。保育園への提出物は毎回遅れて提出するため、先生からも念を押されるように。あるときは、子どもを近所の小児科に連れて行った帰り道が分からず家の周りをぐるぐると迷子になることもありました。



最初に私の様子がおかしいと気づいたのは夫でした。

「一度病院に行った方が良いと思う」

そう勧められて心療内科を受診し、ADHDであることが分かったのです。

それまで、私は「少しおっちょこちょいな人間だ、子どもが生まれて忙しくなったからミスが増えたのかな」という程度に考えていましたが、家族はそのおっちょこちょいでは済まされない行動にきっとひどく迷惑していたことでしょう。

カウンセリングや検査の中で、自分の幼少期を振り返ってみると、確かにこの「ADHD」という障害の特性にぴたりとあてはまることが多く驚きました。物忘れやミスは妊娠出産で突然始まったことではなかったのです。

また、若い頃何かに依存していることが常態化していたのもおそらくADHDの影響もあるのではないかと思います。不思議なことに、診断が出たことで、すっと肩の荷が下りたような気持ちになりました。

「今まで自分が人と同じようにできなかったのは、ADHDの影響もあったのか。」と思えたのです。また、何がそうさせているかの原因が分かれば対策は見つかるだろう、という安心感もありました。

現在も私は通院しながら投薬治療を受け、二人の子どもを育てています。あの時夫が違和感に気付かなかったら、二人目を考えることはできなかっただろうと思います。

今でも若い頃の自分の生き方を後悔し、失敗する度に落ち込む日々だったかもしれません。今では私と夫との間で、私のADHDとしての特性はそこにあるものとして受け入れられるようになりました。

障害について調べたり、理解を深めていくことで自分自身を責め過ぎず、適度な反省にとどめて過ごすことができています。職場でも、ミスへの対策はしながら自分の特性に合った業務に変更してもらうことができました。

発達障害という言葉の強さが、受け取り手に様々なショックを与えることもあると思います。しかし、私は自分の取り扱い説明書を受け取った気分で気楽に生きられるようになったのです。

ADHDとひとくくりに言っても、その特性は様々だと思います。また、特性は特性でしかありません。この記事を読んだ方がご自身のその特性とどう付き合っていくか考えるきっかけになれば嬉しいです。

1991年生まれ。下町暮らしのフリーライター・イラストレーター。出産後ADHDの診断を受ける。様々な立場の生きづらさを考えていきたい人。

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