実録!障がいのある母親に対し子どもはどんな態度で成長していくのか?0歳から5歳編。
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2021.2.16
進行性の難病筋ジストロフィーを抱えながらも、かつては広告代理店で働き、現在は2人の娘を子育てしつつ、ライターとしてマイペースに仕事をしています。私の障がい特性上、家族の「障がい理解」や「さりげない気配り」があって、仕事も家事も子育ても成り立っているのですが、今日に至るまでにはさまざまな葛藤がありました。
執筆:高山 あっこ Akko Takayama
●はじめに
18歳で自分が進行性の難病、筋ジストロフィーだと知った時から、私の中で「子どもを持つ」という選択肢はなくなっていました。
育てる自信がないのはもちろんのこと、「こんな親いやだ!」と言われるに決まっているという恐怖が大きな理由。友達との会話で子どもの話題になるたびに、居心地の悪い思いと、自分が望んではいけない類の話だと肩を落としてしていました。
そんな私ですが、ラッキーなことに理解のある夫に恵まれ2人の娘の母親になりました。
手足の筋力が衰え、抱っこもお散歩もできない母親のもとで育つ子ども。いつ頃から母親に障がいがあると気付いて、どういう態度をとって成長していくのか。現在5歳の長女の実体験でご紹介していきます。
●0歳の頃
生後間もない赤ちゃんは目がよく見えない代わりに、においや声で母親を判別します。実際、娘も私のところに来ると泣き止むケースが多く「さすがはママ」と、周りからもてはやされウキウキでした。
1歳近くなり、目が見え動けるようになってくると一転、「この人は抱っこをしてくれないと人だ」と私を認識した娘は、私がすぐ隣にいても夫に対して手を伸ばし助けを求めるようになりました。その姿を見る度に、胸がつぶれ自信喪失。ヒステリックになることもありました。
●1歳の頃
多くの子が歩き始めるのが1歳。「ママ」「パパ」「まんま」など簡単な言葉を話し出す子もでてきます。
娘も次々と言葉を話しはじめ、私のことを指差し他の人に「ママ」と紹介してくれるように。うれしい反面「私なんかがママでいいのかな」と自信がありませんでした。
2歳目前で話せる単語が増えてくると「パパ、ママ、よいしょ」と、夫が私を介助する様子をしゃべるようになりました。「1歳にして、もう気付かれてしまったか・・・」と変な汗をどっと搔いたのを覚えています。
●2歳の頃
2歳というと、おしゃべりが上手になり簡単な会話のキャッチボールができるようになる年齢です。自分で椅子に座る、服を脱ぐなど、身の回りのことも多くできるようになり物理的な育児は楽になってきました。
娘の理解力も上がってきたので、自分のことを簡単に伝えることにしました。「ママは、びょうきで、あしがわるいんだよ。できないことがたくさんあるけど、できることはいっぱいしてあげるね。」と。
ドキドキしたものの娘のリアクションは「ふーん」。「今日のごはんは、お魚だよ」と同じ程度の薄いリアクションでした。
●3歳の頃
3歳になると幼稚園に入園。「幼稚園バスに乗る際は、他の子は集まって乗るけれど、自分だけは玄関まで先生が迎えに来る」など、特別扱いも気にすることなく元気に通い出しました。
「大丈夫?」と聞くと、「ママはびょうきであしがわるいからね」と理解を示してくれるような言葉も。毎日のように「ママ、だいすき」と言ってくれるようにもなったのも、この頃からです。
妹が誕生してからは、オムツを持ってくる、捨てるなど、「歩くのが大変な私が困ること」を理解してお手伝いをしてくれるようになりました。
●4歳の頃
相変わらず「ママ、だいすき」と言ってくれる日々。妹の世話も積極的にしてくれ「お世話され係」だった過去はどこへやら、立派な「お世話係」へと変貌していきました。
そんな中、ある日突然「ママ、だっこして」と言ってきました。もちろん、私が抱え上げることができないのは知っています。「抱っこはできないけど、ぎゅーはしてあげるね。」とその場は収めましたが、その後何度も「だっこして」と言ってきました。理由を聞いても何も答えてくれなかったけれど、娘の中にもいろいろ複雑な感情があることを知りました。
●5歳の頃
まだまだ「ママ、だいすき」期は続いています。娘の友達に「おにごっこしよう」と私が誘われた時などは「ママはやらないよ」と言ってくれたり「ママは、あしがわるくてできないから」ときちんと説明してくれたりするようになりました。
病気の進行により、いよいよ電動車いすに乗った際には「これなら2人で、おそとにいけるね」と「おひざにのせて」と大喜び。私の心配をよそに楽しそうに受け入れてくれました。
髪を結ぶなど、他の子だとまだまだ親に甘えている部分も自分でやるようになっています。頑張らせてごめんねという気持ちと共に、たくましく成長していく姿に眩しさも感じています。
●まとめ
もうすぐ小学生になる娘。友達や上級生から、私のことをからかわれる日が来るかもしれません。娘から「一緒に出かけたくない」「学校には来ないで」と言われる日が来るかもしれません。
その時を想像するとやはり怖いですが、病気に向き合い胸を張って生きる姿をきちんと見せていこうと思っています。
18歳で「子どもは持てない」と思った時からは想像もつかないくらい、娘たちから無性の愛をもらいながら「子どもとの人生」を生きています。
とりあえず5歳までですが、私の経験が子どものことで悩んでいる人の参考になれば幸いです。
Text by
Akko Takayama
高山 あっこ
Co-Co Life 女子部所属。進行性の難病筋ジストロフィーを抱えながら2人の娘を子育て中。コピーライター・フリーライター。地元でママライターとしても活動。現在、どの電動車いすが最適かをお試し中。