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不安だらけだった障害者になってからの生計の立て方

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2021.11.14

30年近く広告業界で働いてきましたが、心筋梗塞をきっかけに身体障害者になってしまいました。以前と同じ働き方はできないけれど、生活をしていくためにはお金が必要。今回は障害者になってから、私がどのように生計を立ててきたのかをお話します。

執筆:市川 潤一

前回は30年近く広告業界で働いてきた私が、障害者になってから経験した、周囲からの対応などについて書きました。

今回は心筋梗塞を発症して、手術の後遺症で左半身まひの運動障害と、高次脳機能障害を抱える障害者になってしまった私が、30年近く続けてきた仕事を失ってから、どのように生計をたててきたのかなどをお話ししたいと思います。


病気になって悩んだのは「今後、仕事ができるのだろうか」ということでした。

というのも、すぐにでも退院して、仕事に復帰する準備をしたいと思っていたのですが、現実はそう上手くいかず。病院では「少なくとも救急搬送された急性期病院で半年、その後回復期病院(リハビリ病院)へ転院して、期限いっぱいの半年はリハビリをした方がよい。」と言われたのです。最短でも、1年を無収入で過ごす計算です。

これまで稼いだお金は飲み代などに消えていっていたので潤沢な蓄えがあるわけでもなく。急性期病院にいた頃から、「今までの仕事への復帰は厳しいだろう。」と言われていましたので、「どうにか収入を得る方法を探さなければならない。」と焦っていました。

結局、長崎の実家に戻ることになり、それまでの仕事は廃業。社会人時代をほとんど地元で過ごしていないために人脈もなく、このような体になったこともあって、友だちや周囲の人たちも離れていきました。

どうしようもなくなっていたところで、社会福祉協議会(社会福祉活動を推進することを目的とした民間組織)のソーシャルワーカーさんから、「失業保険や傷病手当は会社がNGを出したのでダメかもしれないけど、障害年金なら申請できるかもしれない。」と教えてもらいました。

社会保険事務所へ何度も足を運び、説明を聞いてみると、どうやら私は障害年金を受給する要件は満たしていそうでした。年金の支払い年数なども問題なく、急性心筋梗塞を発症した時に社会保険に入っていたことも大きかったです。

各種書類と診断書を取り寄せ、申請してから待つこと数ヶ月、障害年金の申請が通りました。当面のフリー時代にこしらえた設備投資のための借り入れの支払いは出来るようになって、少しだけ心の余裕を取り戻すことに。

しかし、生活を送っていくための収入として、年金だけでは心許ありません。仕事を見つけるために障害者向けの企業説明会などにも足を運んで、話を聞いてみましたが、通勤のことや、社内のバリアフリー環境が整っていないなどのこともあって、なかなか良い返事はもらえませんでした。

「それならば、在宅で今までのように原稿を書く仕事を見つけよう。」とネットサービスのライター募集のサイトなどに登録していくつか仕事に応募してみたりもしましたが、納品してもギャラが支払われないことが何回かあったり、取材に行けないことがネックになったりして、なかなか継続できる仕事には繋がりませんでした。

行き詰まっていたところ、またしても、ソーシャルワーカーさんから「近所に就労継続支援B型の事業所があるから、そこに通って何かしらの技術を身につけてみては?」と紹介をしてもらいました。

そこは主に彫金を行っている事業所でした。私は、手術の後遺症で左半身にまひが残っているため、細かい作業は右手で行っていますが、片手での彫金の作業は非常に難しかったです。

彫金以外にもできた作品を撮影した画像を補正したり、加工したりするという、今までの経験してきた作業もあり、それなら片手でもかろうじてできました。

病気をし、障害者になって以来、はじめて達成感のようなものを得られるようになってきました。しかし、B型事業所の賃金で生活するのは難しいです。

作業所に通いながらも、ネットを使って職探しをしていたところ、障害者向けの在宅勤務探しの支援をしてくれるエージェントを見つけ、登録しました。

イラストレーターやフォトショップの作業もできることが決め手となって、ある企業の営業支援を行う部署を紹介してもらい、そこに籍を置かせてもらうことになり、B型事業所を卒業しました。


障害者雇用になるので、収入はフリーでやっていた頃の何十分の一にはなってしまいましたが、毎月いくらかでも収入があると心にゆとりも産まれます。安定した収入を得られるまでは、めちゃくちゃ心が焦っていて、ちっとも余裕がありませんでした。

家族や友人にも余裕を持って関われるようになってきたと自分でも実感しています。働いて、社会活動に参加し、その対価を得るというのはこんなにも心を穏やかにさせてくれるのです。おかげさまで借り入れの支払いもずいぶんと進み、以前のようにお金で悩まされ気持ちが沈むこともあまりなくなりました。

1975年生まれ。長崎県佐世保市出身・在住。愛媛県でライター・編集者・カメラマンなどとして活動していたときに脳梗塞になり、左半身麻痺の身体障害者となる。取材活動ができなくなり、ライターを廃業。障害者雇用の在宅ワーカーとなり現在に至る。障害者の仕事の仕方や見つけ方など自分の経験を紹介していきたいと思います。

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